こんな人におすすめの記事
・バイアスについて詳しく知りたい人
・自分の欲しい情報だけを集めちゃう人
・頭を柔らかくしたい人
・心理学、論理学に興味がある人
さまざまな例が載っていて、認知バイアスの入門書として最適でした!!
「バイアス」とは、
「偏見」や「先入観」など、
ある情報を偏って集めてしまったり、
一部しか見ていないことなどで、
意識的に、特に無意識的に起こる認知の反応
のことを指しています。
本について
【参考文献】
情報文化研究所, 『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』, フォレスト出版, 2021, p262
著者 情報文化研究所
情報文化研究所は、
多彩な領域の研究者が集い、議論や提言を行っています。
その中の研究者3名、
山﨑紗紀子さん、宮代こずゑさん、菊池由希子さんが、それぞれ、
論理学、認知心理学、社会心理学のパートを執筆されました。
心理学、論理学の入門書
60コのバイアスについて述べられていて、
それぞれは見開き2ページずつで、
とても読みやすい内容になっています。
本書は、大学の新入生を意識して執筆されていて、学問の入門書として打って付けです。
また、ビジネスパーソンも活かせそうな、
「認知的不協和」
「現状維持バイアス」
「心的制約」
などの様々なバイアスも載っているため、
「バイアス」について知りたい人は、
誰でも読んでみると良いと思いました!
本の内容 要約・抜粋
・論理学的アプローチ、
・認知科学的アプローチ、
・社会心理学的アプローチ、
それぞれ20コずつのバイアスが載っています。
各章から1つずつ印象的だったものを
感想や体験談とともに抜粋したいと思います。
「対人論法」:論理学
「あの人は、いつも楽観的だし、根拠がないから、あの人が今言ったことは間違いだよな」
「あいつは何も知らないはずだから、耳をかさないほうがいいか」
誰しも、無意識のうちにも、
このように考えたことがあるのではないでしょうか。
このような例が、対人論法に当てはまります。
それでは、対人論法とはどういう意味でしょうか。
「対人論法」とは、
「問題の論点ではなく、論じている論者が持つ性質などを批判することで、相手の主張を退けること」(p46)
身近な人に限らず、
テレビで見る芸能人や、
政治家の話などにも、
このようなバイアスがかかってしまうことはあると思いました。
大事になってくるのは、
「本人の意志で変えられないような属性(出身、性別、家庭環境、人種、容姿、宗教など)を取り上げて攻撃するのは差別であり、御法度である (p49)(一部改変済み)」
ということである。
オオカミ少年のように、
いつも嘘をついている人の話を
人々が聞かなくなるのは、
ある程度仕方がないと思います。
人の脳みそのキャパを効率的に利用するためには、そんな人の話は聞き流したほうが良いからです。
しかし、
・女性が言っていたから
・あの国の人が言ってたから
・あの見た目の人が言っていたから
という思考になっていくのは、少し危険な気がします。
ぜひ、こういう思考に気づいたら、
「対人論法」のバイアスにかかってしまっているかもしれないことを意識してみてほしいです!
「確証バイアス」:認知心理学
・一度、嫌になった人の行動は、次々と悪い面ばかりが見えてくる。
・根拠のない噂だが、そう思える出来事ばかりが起こってきている気がする。
こんな認知のプロセスになったことは、誰しもあると思います。
これが確証バイアスです。
逆に、好きになった人の行動は、
ダサかったとしても魅力的に見えますよね…(笑)
不思議です。
「確証バイアス」とは、
「自分の考えや仮説に沿うような情報のみ集め、仮説に反するような情報は無視する傾向のこと」(p164)です。
これは、
科学的な根拠がない噂話や、
都市伝説において起こると、
間違った偏見を持ちやすくなってしまう気がします。
例えば、
噂で、ある人の失敗や
モラルに反する行動を聞いたとします。
そうすると、自分で見たわけではないのに、
その人の他の行動までもが怪しく見えてきてしまうのです。
これは、現代のインターネットやSNSが流通している中で、
フェイクニュースなどが影響力をもつ大きな要因の一つになっているのではないでしょうか!
「基本的な帰属の誤り」:社会心理学
・友達が忘れ物をしたときには、まったくおっちょこちょいだなと思う。
・自分が忘れ物をしたときには、昨日は寝不足で、今日は急ぎの予定があったからだと思う。
このような例は、基本的な帰属の誤りだと言えます。
そもそも「帰属」とは、
簡単に言うと、「原因を考えること」です。
つまり、ある出来事や行動が起きたときに、
その原因を探したり、考えたりするプロセスのことを
「帰属」と言います。
上記の例の場合は、忘れ物をしたのは、
「友達がおっちょこちょいであること」が原因で、
「自分が寝不足で、急ぎの予定があったこと」が原因になっています。
そして、この例を見ると、
友達の場合は、その人の性格に帰属し、
自分の場合は、状況や環境に帰属しています。
このような現象を「基本的な帰属の誤り」と言います。
「基本的な帰属の誤り」とは、
「他者の行動の原因について説明するとき、素人の能力や性格などを重視しすぎて、状況や環境などの要因を軽視すること」(p202)
これは、逆に、自分のことを言うときは、
状況や環境に帰属させやすいと言えます。
自分の経験は、自分のことと環境のことが全てわかりますが、
他人の経験については、環境のことを知りえない、
または、考慮に入れないことが多いのでしょうね。
本書から学べること
バイアスを意識できるように
バイアスのほとんどが無意識的なものだと感じました。
これは、無意識のうちに、
・誰かを不当に扱ったり
・誤った出来事を事実と捉えたり
・消極的で行動を起こさないようにしたり
・自分の意見が変えられてしまったり
してしまうということです。
バイアスというのは、とても強力なものだと思いました。
だからこそ、
その構造と理論を把握することで、
バイアスを意識できるようになり、
それのネガティブな結果を防げるかもしれないと思います。
これは、私が大事にしている価値観の合理的の部分です。
そして、バイアスを意識的に減らせるようにすれば、
不要な衝突を避けることができ、
それは、心の余裕、寛容であることにもつながると考えます。
本書のメリット
人間がもってしまう
様々なバイアスについて知れる本ですが、
様々な種類のバイアスはそれぞれ繋がっている、
ということも知れることができました。
人間の心理にはこういう傾向があり、
その傾向から生まれるバイアスは、これとこれとこれがある。
というように、構造的にバイアスについて理解できる内容になってます。
それも60コものバイアスについて
取り上げているからではないでしょうか。
まとめ
情報文化研究所の3名が執筆した『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』を紹介しました。
本書に載っているバイアスは、
誰もがもってしまうものです。
そんなバイアスについて知ることで、
バイアスのせいで起こる、
ネガティブな行動や、争いが減らせるかもしれないです。
そんな可能性を頭でも感じさせてくれる本書、
ぜひ多くの人に読んで欲しいと思います!!