【書評】「ニューロダイバーシティと発達障害」天才はなぜ生まれるのか。ニューロダイバーシティとは?

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こんな人におすすめ

多様性を大事にしたい

発達障害(自閉症、ADHD、学習障害)などについて知りたい

歴史的な人物と発達障害の関係を知りたい

さかす
さかす

発達障害の特徴についてより知れるだけじゃなく、

なぜそのような障害が発生するか、どう対応するべきか、

そして、それは多様性の一部である、という視点に触れられます。

本について

【紹介文献】正高信男, 『ニューロダイバーシティと発達障害』, 北大路書房, 2019, 277p

本の内容 要約・抜粋

第1章で発達障害の特徴を、実験の例を用いて説明しています。

第2~9章では、エジソン、坂田三吉、アインシュタイン、レオナルド、アンデルセン、ベル、ディズニー、モーツァルトたちが発達障害であったのではないか、という可能性を示し、

その障害ゆえに、他の能力を発揮し、偉業を成し遂げたことを説明しています。

⓪発達障害とは(本書外)

発達障害には、

・ASD(自閉スペクトラム症)

・ADHD(注意欠陥多動症)

・LD(学習障害)

・トゥレット症

・吃音

などの症状があります。

脳機能の偏りが原因ですが、現代の社会生活の中では、それによって生活上の困難が生じる場合もあります。

医学的な診断の基準はありますが、それを満たしていないけれども、そのような傾向がある場合は、グレーゾーンとも呼ばれます。

①なぜ発達障害は淘汰されないのか

そもそも、障害というのは、現代の生活上で困難が生じるため、「障害」と呼ばれます。

そのため、現代の社会とは違った形の時には、「障害」ではなかった場合もあり、

むしろ、その特徴が強みになっていた可能性もあるのです。

著者は、狩猟採集の時代では、むしろ、発達障害の特徴が、人類の存続に重要だった可能性を推測しています。

その証拠となるのが、ラスコー洞窟などに描かれた、大型動物の絵です。

実は、この絵が、現代の自閉症者が描く絵と類似しているのです。

自閉症者は、人の表情などへの関心が、健常者よりも圧倒的に少ない代わりに、建物や、昔には、大型動物などへの観察眼が優れていました。

その観察眼に基づいて、絵を描き、その知識を他の人とも共有していたかもしれません。

つまり、そのような現代で言う自閉症者の自然に対しての観察眼が、狩猟採集の時代では、重要だったのかもしれないです。

②アインシュタインの例

アインシュタインは、頭頂葉に障害があったことがわかっています。

この頭頂葉は、言葉を一時的に心の中でループさせ、思考を言語で処理する際に働きます。

アインシュタインは、この音声的な言語のループができなかったため、視覚的な情報のループができるようになっていった可能性があるのです。

そして、それこそが、アインシュタインが相対性理論などの、常人には想像することができないような、体系的な理論を生み出した要因となったのです。

本書から学べること 感想

脳機能について

人間は、話す、聞く、食べる、歩くなど、一つの行動をとっても、さまざまな脳の領域を使っています。

なので、ある行動ができないなどの障害が生まれた原因は、一つに限定できるとは言えないのです。

ある脳の領域に障害があって、その領域の働きを基本とする、高次の脳機能に影響があることもあるのです。

このような脳機能の例が、さまざまな偉人を例にされています。

なので、現代の教育上では、どこに障害があるのか、ということをしっかりと特定していくことが重要であると言えます

人によって、どこの脳機能に障害があり、どのような症状として現れるかには違いがあります。

例えば、読みが苦手だから、しゃべって伝えればいい、という一辺倒な対策では、効果がある人もいればない人もいることになりそうです。

ニューロダイバーシティとは

「ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)」とは、

Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)が組み合わさった言葉で、

発達障害などとして扱われる脳の神経の違いを、障害としてだけ扱うのではなく、

それぞれのあり方として尊重し、社会の中で活かせる面は活かしていこうという考え方です。

人の役に立つ特徴でなければ価値がないのか?

これは、私が思った疑問であり、危うさを感じたことですが、

本書では、「障害」と呼ばれる特徴が、強みになり、偉大なことをした例が挙げられています。

もちろん、ニューロダイバーシティという考えが広まることや、このような捉え直しは、障害者自身、そしてその周りの人の障害者への認識をポジティブにするものでもあると思います

ですが、そこには、偉業を成し遂げたか、社会の役にたつかという視点が、少なからずあると感じました。

さかす
さかす

能力主義の危うさかも!

そのような視点でふるいにかけることなく、どのような人でも、多様性の一つとして認識され、掬い取られる社会になったら良いなと思います。

また、難しい側面ですが、社会の側が、障害者の価値を評価している構造にも少しだけ違和感を感じました。

そのような問いに関しては、こちらの本によって学ばせられました。

ぜひ記事を見てみてください!

さかす
さかす

この社会の中で、特に不便なく生きていけるマジョリティがもっている特権性について、自覚させてくれる本でした。

まとめ

正高信男さんの 『ニューロダイバーシティと発達障害』を紹介しました!

発達障害があるということ自体が、生きづらさにつながる社会になってしまっています。

本書は、そのような発達障害に関しての理解を深められるのはもちろん、

そのような社会に対する、発達障害もダイバーシティの一部ではないのか、という問いかけをしています。

同じ社会に生きる人として、読むべき一冊でした。

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