【書評】合理的配慮とは何か「社会を扱う新たなモード」〈要約・感想〉

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こんな人におすすめ

社会の偏りについて気になる

合理的配慮と聞いたことがあるけど、それが何か知りたい

・障がい者への配慮などについて知りたい

マイノリティの人の生きづらさについて知りたい

・社会問題、障害学について興味がある

さかす
さかす

思いやり、優しさはもちろん大事!、だと思うけど、

根本的な解決には、他の視点(社会モデル)が必要」、そう学べた本でした。

本について

【紹介文献】飯野由里子, 星加良司, 西倉実季, 『「社会」を扱う新たなモード 「障害の社会モデル」の使い方』, 生活書院, 2022, 257p

本の内容 要約・抜粋

専門的な内容も多くあり、内容が濃いので、印象に残ったところをメモのように抜粋しながら概要をまとめたいと思います。

当事者研究と「社会モデル」の近くて遠い関係

当事者研究への批判

インペアメント(身体の機能損傷又は機能不全で,疾病等の結果もたらされたものであり,医療の対象となるもの)の可変/不可変の線引きを、そのまま、帰責/免責の線引きにしてしまう暴力性

「心のバリアフリー」は毒か薬か

多様な個人の能力が活かされる社会とは、能力主義的でもある。

性の権利

「ホットでセクシーであることができる権利」の前提にも、性暴力がないことはもちろん、経済的、釈迦的、文化的な事情や制約が見えにくいところで大きく関わっている

合理的配慮は「社会モデル」を保証するか

障害は、個人の問題であるが、社会でも解決できるというような「個人モデル」的な解釈もできてしまう。

インペアメントに強い関心がいってしまい、そもそもそれをディスアビリティたらしめる、社会との関係を軽視してしまう。

社会的な問題としての言えなさ

障害が不変であるという誤解(体調のように変わるものもある)、

困難さへの無理解(自分の経験をもとに他者の障害を判断してしまう)、

今ある状態への正当化(みんなそうしている)

などによって、合理的配慮がなされないケースがある

変えられる社会、変えたくない社会

現存のルールは、マジョリティにとって生きやすいものであり、それが「普通」の状態であるため、その特権性が見えづらく、現存のルールで生きづらさに直面しているマイノリティが問題視されない

「社会モデル」を使いこなす

「個人モデル」の要素をもってしまっている「社会モデル」の言説への批判

マジョリティ性の壁を壊すには、現在の社会構造を分析することが必要!

本書から学べること 感想

既存のルールに既に権力関係がある

これは、さまざまな面で言えることかもしれませんが、

既存のルールや環境にすでに、マジョリティとマイノリティの間に不均衡な権力関係が生まれてしまっていることが多々あることに改めて気付かされました。

わかりやすいところでは、障害者には自立する力がないから、手助けをして生きやすくしよう、というような「個人モデル」の視点。

また、一人のために大規模なルール変更はできないから、仕方がないと流されるケースなど。

これに関して印象に残ったのが、ルールというものの目的を、

「さまざまに異なるもの同士が共生し、互いを尊重しながら社会生活を円滑に営むための指針や規準(p219)」

として考えたときに、多様な社会成員のそれぞれの状況にあった、多元的なルールがあるのは当然のことではないか、という意見です。

その通りだと思いました。

6章の「変えられる社会、変えたくない社会」でも挙げられていた、選挙の代筆の例のように、

それぞれの状況、リスクに対応した個別のルールを、対話を通して作っていくことは、とても大事なプロセスなのではないかと感じました。

合理的配慮は、障害者以外の生きやすさにもつながる

生きる上でのとある困難や問題を、社会的な問題として、俎上に上げるという、

「社会モデル」に基づいた合理的配慮のプロセスが浸透すれば、障害者以外にも生きやすい社会になる、ということに納得しました。

この社会で生きづらさを抱えている人は、障害者だけではないはずです。

・民族・宗教・性などの様々な面に関するマイノリティ

・他者のケアを集中的にしている人

・災害、事件、事故に巻き込まれた人

などなど

また、本書には書いてありませんでしたが、

さかす
さかす

私自身がそうですが、社会のスピード感などについていきずらかったりする、障害と名付けられずとも、性格的に繊細な人たちも生きづらさを抱えていると思います。

そのような多様な生きづらさを、社会の課題として改善していこうという流れができている社会というのは、多くの人にとって生きやすい社会になるはずだと思わせてくれました!

まとめ

障害が発生する社会的な視点を重視した本書、『「社会」を扱う新たなモード」を紹介しました。

何気なく生きているマジョリティの人、それぞれにも、社会の課題に関するほんの少しずつの責任があるのかもしれません。

同じ社会に生きる人として、このような社会的な課題に興味がある人はぜひ、読んでみて欲しいです。

さかす
さかす

とても複雑な社会でありますが、

全ての人にとって、自分らしく、生きやすい社会になったら良いなと思います。

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